天啓を待つな～「十二国記・風の海迷宮の岸」に見る、自分で選ぶということ～

今日は、
アクセサリー作家でもなく、
占星術師でもなく、
私一個人としておすすめの本のご紹介♥

ご紹介したいのは小野不由美さんの「十二国記」シリーズのなかの
「風の海迷宮の岸」です。

〇はじめに…

少し、小説「十二国記」の世界観についてお話ししておくと、
小説の舞台である十二国があるのは、私たちの世界と「蝕」と呼ばれる現象によってのみ行き来することができる、地図上にない異世界です。
そう、「十二国記」はファンタジー小説なのです。

十二国の世界では、
天意を受けた霊獣・麒麟が、天啓により王を選び、麒麟と誓約を交わした王が国を治めます。
麒麟は王の即位後は王の輔佐役です。

「風の海迷宮の岸」は、戴国(たいこく)の麒麟・泰麒(たいき)が、自らの王を選ぶまでの物語。
けれど、ただ”王様を選ぶ冒険譚”ではありません。

「十二国記」シリーズのなかでも「風の海迷宮の岸」は私の心に深く残っている一冊です。
なぜ、この物語をいま、ご紹介したいと思ったのか。
初めて読んでから20年以上たってなお、心に響くのか。

この物語に込められているのは、「選ぶ」ことに対する、驚くほど深いメッセージ。

なぜ選ばなければならないのか？
どうして誰も正解を教えてくれないのか？

答えはひとつ。
麒麟が選ぶことこそが、天啓だから。

これは、「自分が決めたことが、世界の理（ことわり）を動かす」という、
非常に力強いメッセージだと思うのです。

それは、いま占星術を学び・伝えている私自身にとって、強い共感を覚えました。

〇「奇跡」ではなく「選択」が世界を動かす。

占星術をやっていると、
ときにスピリチュアル的な世界の話をよく聞きますし、
それこそ「運命に導かれる」ようなエピソードにも多く触れます。

「きっとこれは天のサインだ」
「この出来事には意味がある」
―そんなふうに、外側からの“奇跡”に確信を得たくなる気持ちは、私にもよく分かります。

けれど、
「風の海迷宮の岸」で描かれるのは、まったく逆の世界です。
麒麟である泰麒が選んだその人物こそが王、つまり”天意”である。
誰かが「これが正解です」と教えてくれるのではなく、自分の選択こそが、正解になる。

外から与えられるものではなく、自分の中から生まれる“決断”によって、世界が動いていく。
この設定は、物語の中だけのものではなく、現代を生きる私たちへの強いメッセージにも思えました。

〇「選んだこと」が正解になる世界。

泰麒は、はじめから強い意志を持っていたわけではありません。
むしろ、彼は誰よりも迷い、悩み、自分の選択を疑い続けていました。

「自分の善とはなにか」
「この人が本当に王としてふさわしいのか」
―そう問い続けながら、それでも彼は、選びます。

この泰麒の葛藤から決断までの流れが教えてくれるのは、
「選ぶこと」そのものが力になるということ。
どれほど不安でも、恐れがあっても、自分の感覚で選んだものには、確かな意味がある。

なにを選んだかではなく”自分で選んだ”という事実が、
人生に責任と希望をもたらしてくれるのだと感じました。

〇星に従うのではなく、星を通して“自分の声”に気づく

私は占星術師として、星を読む仕事をしています。
でも、星を読むということは、”星に従うこと”ではないと思っています。
星は、私たちに「こう生きろ」と命じているわけではないからです。
むしろ、星は”自分の声に気づくための鏡”のようなものだと感じます。

たとえば、
ホロスコープを読んで「この時期に大きな変化があるかも」と見えてきたとき、
それを“天からのお告げ”のように扱うのではなく、
その変化が自分の中にどんな納得感や違和感をもたらすのか、
あるいはどんな試練に向けての準備をさせるのか、
そこに耳を澄ませることが大切だと私は思っています。

泰麒が誰かに教えられるのではなく自分の”善い”と思う心で王を選んだように、
自分の感覚で選んだことが、世界を動かす。
その視点を、占星術の中でも、もっと伝えていきたいと感じています。

〇最後に…

選ぶ力を、誰もが持っています。
「風の海迷宮の岸」を読み終えたとき、私は深く考えさせられました。
「誰かに選ばれる」のではなく、「自分が選ぶ」ことが人生をつくる。
この物語は、その真理を優しく、けれど強く私たちに教えてくれます。

選ぶのは怖いことです。
間違うかもしれないし、
正解が分からないから。
それでも、
自分の感覚を信じて、違和感を無視せず、納得できる選択をする。
そのこと自体が、世界を動かす一歩になるのだと、私はこの物語から教えられました。

あなたの選択が、誰かの正解ではなく、あなた自身の天啓でありますように。