「ファッションは色あせるけど、スタイルは永遠」 イヴ・サンローラン
国立新美術館で開催中の「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」に行ってきました。
イヴ・サンローランはクリスチャン・ディオールの急逝をうけて21歳の若さでディオールブランドの主任デザイナーを引き継ぎました。
なので私は、サンローラン自身はディオールからの影響が色濃いデザイナーだと思っていたのですが…、ファッションを通じて女性の自立と自信確立を体現しようとしたという意味では、むしろココ・シャネルととても似たところがあると感じました(ディオールはどちらかというと正統派にエレガンスを追求したイメージ)。
冒頭に書いたのは、サンローランの言葉ですが、実はココ・シャネルも、とてもよく似た言葉を残しています。
「モードではなく、私はスタイルを作り出したの」 ココ・シャネル
年齢的には、シャネルの方がかなり先輩ですが、
20世紀初めから中盤にかけて、大戦の影響で世界情勢が劇的に変化し、それにともなって女性の社会進出が進み女性観も変わっていくなかで、
ファッションを通じて女性を支援しつづけた点は、とてもよく似ていると思います。
今、私たちが当たり前のようにパンツスーツを着て、テーラードジャケットを羽織っているのは、サンローランの功績によるものだと実感させられます。
また、サンローランに限らず、現代の洋装の基盤を作ってきたこの時代のデザイナーたちは、本当にすごいものを生み出してきたのだなと思います。
黒を日常で着るのも、コルセットやスカートの骨組みに頼らずシルエットを作るのも、女性のパンツスタイルも、本物の宝石を使わないデザイン性重視のアクセサリーも、ほとんどがこの時代のデザイナーたちが作り上げてきたものです。
また解説を読みとても驚いたのが、
サンローランは世界各地の文化に影響を受けたコレクションを発表していますが、そのほとんどが書籍や絵などを参考に、頭のなかで想像を巡らせて作られたものだということです(サンローランはあまり旅行が好きではなかったらしいです…)。
「やっぱり実物を見ないと!」
と、ときに私たちは“生で体感すること”にこだわりたくなりますが、サンローランはそんな固定観念を覆すほどに、豊かな感性の持ち主だったことを感じさせられました。
また公私ともにパートナーであったピエール・ベルジェの存在が、サンローラン本人にとっても、またブランドにとっても、かなり大きいものだったようです。
パトロンや裏方にスポットライトが当たることは、デザイナー本人の注目度に比べれば極端に少ないです。ただ、ファッションデザイナーに限らず、クリエイターはときに孤独感にさいなまれることがあるのではないかと感じますが、サンローランにとって彼の存在は、ビジネス以外にも大切な意味があったのだと思います。
今回の展覧会が実現したのも、彼がサンローランの遺産をしっかりと保護していく土台を築いてくれたからです。
今回の展覧会開催にあたり、ご尽力くださったすべての方に感謝の気持ちでいっぱいです。
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