中川衛展 In パナソニック汐留美術館

展覧会・美術館・Art

 私の最寄り駅は、都営地下鉄大江戸線なのですが、その地の利をフルに活かすべく、汐留のパナソニック汐留美術館で開催中の「中川衛展」と、六本木の国立新美術館で開催中の「テート美術館展」をはしごしてきました。

 すべてを書きつくそうと思うと、とても長くなってしまいそうなので、はじめに「中川衛展」について、次に六本木と、順をおってマイペースに書きたいと思います。

展示の一部は撮影が可能でした。こちらは中川氏の作品ではなく、
近代作家たちの代表作を並べたものになります。

 工芸家である中川衛氏は、金沢美術工芸大学工芸科教授であり、彫金の重要無形文化財保持者(人間国宝)でもあります。
 4月に金沢に行ったとき、金沢は工芸の技術継承にとても熱心な土地柄だと知り、今回の展覧会もとても気になっていました。
今回の展覧会ではじめて知ったのですが、中川氏は松下電工(現・パナソニック)に入社していた経歴があり、きっとその縁で、パナソニック汐留美術館で展覧会開催の運びとなったのでしょう。

 展示品の技術が細やかで見事なのは言うまでもないのですが、
まず、基本的なことで言うと工芸ってそのほとんどが“日用品”なのです。
民芸品ほど所帯じみてはいないものの、香炉や花瓶など、“生活のなかにあるもの”でありけしてただ飾っておくためだけのものではない、というのが 新鮮な気付きでした。
 実用性と美は両立しうるか、というのはよく問われることですが、私は強い確信をもって”両立できるものだ”と思っています。
 今回は彫金の作品だけでなく、中川氏の松下電工在籍時代のデザインスケッチなども、数は少ないながら展示されていました。
そのスケッチを見て、いかに松下電工という会社が自社の製品にたいしてプライドを持っていたかが伺い知れました。
使えればいい、機能性だけ高ければ消費者は納得する、そんなおごりが一切感じられないのです。製品としての機能性が高いのは当たり前、そして、機能的であるものこそ美しい。そんなことを語りかけてくれる展示でした。

 展示終盤での中川氏の制作滑動をおった映像が流れていましたが、そのなかで氏が、
最初につかんだものがそのまま形になることはほとんどない、何年も何年も自分のなかにとどまり、次々に吸収されていくものたちと融合し、そうしてやっと形になって出てくる、
というような主旨のことを述べていたのがとても印象的でした。

 私も「売れるデザインを量産したら売上あがるんだろうな」と、思いはします。
ただどうしても、じゃあ売れる流行りのデザインを何個も作ろう!とは思えないのです。
おそらくそれは、私がアクセサリーを作りたい気持ちが、
「商売をしたい、稼ぎたい」より
「自分を表現し、それに共感してくれる人に届けたい」に起因しているからだと思います。

 流行りのデザインを求めてくれる人はたくさんいるかもしれません。
でも私がお客様に届けたいのは”流行りのみんなが欲しがるアクセサリー”ではなく”自分が良いと思うものを突き詰めて生み出した、心のこもった作品”なのです。
次々とキャッチーな作品を作れる作家様も、もちろん素敵です。そのためにはきっと多大な研究力と制作意欲が必要だとわかるからです。
しかし、自分は自分、人は人、です。
 自分の制作の源は何か、けして早くなくても、しっかりと足元を見つめながら制作の道を歩んでいこうと思いました。

続き→テート美術館展 光 In 国立新美術館

パナソニック汐留美術館:中川衛展広報ページ

どうでもよい小話
我が家の結婚指輪は、日本のジュエリーブランドNIWAKA様で求めた京杢目(異なる2種の金属を用い、その色相の違いを木目のようにみせる彫金技法の一種)の指輪です。
この京杢目という技法の美しさに一目惚れし、いつか絶対に、ここの指輪が欲しいと思っていました。しかしまぁ2ケタの指輪なんて自分用にはとてもとても…と思っていたところ、結婚指輪というこの上もない理由(口実)から、憧れの京杢目を手に入れました。
夫様、妻の好みしかないチョイスに同意していただきありがとうございます。

コメント

  1. […]  さて、前述の「中川衛展 In パナソニック汐留美術館」に続き、今度は六本木の国立新美術館で開催の「テート美術館展 光 」についてです。 […]

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