ジャンポール・ゴルチェ「ファッション・フリーク・ショー」鑑賞記録

ファッション~装いあれこれ~

 東急シアターオーブにて上演中のジャンポール・ゴルチェ「ファッション・フリーク・ショー」を観劇してきました。

「ファッション・フリーク・ショー」パンフレット

 ジャンポール・ゴルチェ氏はフランス人のファッションデザイナーで、彼の作品のなかではマドンナが着用したバストを極端に強調したコーンブラが有名です。その作品の多くが大胆で奇抜、日常生活で着ることは困難に思えるようなものが多く、奇をてらったデザインばかりするデザイナーとだけ認識されることもしばしば…と感じます。
 しかし、ゴルチェ氏のキャリアについての評価はフランス国内外を問わず、とても高いものがあると思います。パリ・オートクチュール・コレクションへの参加権※1を有していることからもそれが伺えます。

 一見すると、その奇抜さにのみ目がいきがちですが、ゴルチェ氏のデザインの内側には、服をまとう人の”肉体と魂への賛美”が込められていると感じます。
今回のステージでは、まるで着ぐるみのような大型の衣装も登場しますが、俳優がほとんど素肌にちかい状態でパフォーマンスする場面も随所に見られます(特にラストは圧巻)。どんなに奇抜な衣装であっても、それだけで成り立っているのではなく、その内側の肉体があってこそ纏う人の個性が活きる、という強いメッセージを感じます。
 ここで重要なのが”内側にある肉体”というのが、けしてステレオタイプなモデル体型ではない、ということです。ゴルチェ氏のデザインは、大柄な人、小柄な人、瘦せ型の人、ふくよかな人、筋肉質な人、肌の色・性別・年齢問わず、すべての肉体が美しいと賛美しています。実際、今回のステージの出演者の身体的特徴もじつにユニークで美しく、また、彼のランウェイにはこれまで、老若男女問わずさまざまなタイプのモデルが起用されてきました。

 余談ですが、「外観の奇抜さが人目を引きつけるが、その内側には大いなる人間全体への賛辞がある」という点では、荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの表現につうじるものがあると思っています(「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズも大好きです!)。

 また、ゴルチェ氏が男性モデルへの敬意を忘れないことも、彼の人格を伺い知るうえで大きな要素です。レディースが主流のオートクチュールコレクションにおいて、ゴルチェ氏はメンズのラインも発表しています。今回のパンフレットにも“モデルは男性の方が収入の低い唯一の職業”との記述がある通り、氏は男性モデルの厳しい現状にも目を向けています。

 ステージのラスト、ゴルチェ氏本人の映像が流れます。
「すべての人は美しい」
これこそがこのステージを集約する一言だと感じました。

※1.パリ・オートクチュール・コレクションはブランドを持っているデザイナーであれば自由に参加できるわけではなく、サンディカ正式加盟店、フランス国外招待ブランド、招待ブランドのみが参加を許されており、ゴルチェ氏のブランドはサンディカ正式加盟店にあたります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました